人文社会科学LABO

塾講師による人文社会科をわかりやすく解説するブログ

【世界史】【哲学】タレス 哲学の祖の凄さ

いらっしゃいませ! 人文社会科学LABOへようこそ! こちらでは、こんなことしてます。よろしければ、ご覧になってみてくださいね。

 

miyamot.hatenablog.com

 緊急事態宣言がまた出されましたね。なかなか収まらないコロナウイルスは人的被害だけでなく、経済的な問題としても世界に大きな影響を与えています。

不景気なニュースばかりですが、そういった世の中が暗い雰囲気に包まれたときに売れる本のジャンルあるらしいです。

それは倫理思想のジャンルだそうです。八方塞がりでどうしようもなくなったとき、人間は何かしら新しい考え方や打開策を求めてそうした本を手に取るのかもしれませんね。

ということで、今回は哲学がどう始まったのか、その始祖のであるタレスについて解説します。

それでは、いってみましょう!

 

 

1.哲学とは

いきなり難しいテーマから入っていきますが、できるだけわかりやすく解説できるように頑張ります(笑)

なぜ、難しいのか。それは哲学の定義について研究者の間でもまだまだ議論があるからです。

そのため、ここでは直接的に哲学の定義をするのではなく、哲学の誕生前と後で何が変わったかを歴史的に眺めたあとに、1-2.で通説的な定義を紹介していきます。

1-1.哲学以前

哲学誕生の地は、古代ギリシャになります。周辺地図を載せておきますね。

f:id:miyamot:20210109082127g:plain

哲学誕生以前(紀元前7世紀より前)の古代ギリシャでは、この世のすべてが神話で説明されていました。一度は聞いたことがあるかもしれませんね。ギリシャ神話です。ゼウスとかポセイドンとかですね。

雨や雷といった天候はもちろん、吉凶や人の運命や人生などほとんどのことは神話や神によって説明され、神話なしには生活ができない程でした。何においても神話が絶対的な指針になっていたわけです。

これは、紀元前8~7世紀ごろにホメロスの「イリアス」や「オデュッセイア」、ヘシオドスの「神統記」や「労働と日々」といった長編物語に神と人間の関係が描かれたのが大きな原因の一つとされています。世界史で聞いたことがある方もいるかもしれませんね。

つまり、哲学誕生以前は人々は絶対的に正しい神話によって世界を認識、解釈、説明していたということになります。

では、その世界観は哲学の登場によってどのように変化したのでしょうか。

1-2.哲学の誕生

哲学は、紀元前7世紀古代ギリシャのある都市で誕生しました。それが、ミレトスです。

古代ギリシャの人々は、多神教が反映されたギリシャ神話に基づいた生活を送っていました。つまり、各々が信奉する神に従って生きていたわけですね。

これは、みんなが同じ神を信奉している小さなコミュニティーだと問題がありませんが、他の神を信奉しているコミュニティー接触したときに自分の信奉している神話や神の絶対性が揺らいでしまうことになります。カルチャーショックをイメージしてみると分かりやすいかもしれません。(え、この神様が絶対じゃないの!!?という感じですね(笑))

それが実際に起こった都市がミレトスでした。

上記の地図を少し見てみてください。現在は土砂の堆積によって海には面していませんが、ミレトスは当時港町として栄えていました。つまり、この海に面している多くの地域と交易があり、異なった価値観や文化に触れることが常だったわけですね。

そこで、みんなが神話によってバラバラにとらえているこの世界を何とか共通理解できる形で説明できないかと考える人々が現れてきました。これが哲学の始まりになります。

哲学の誕生によって、それまで神話によってまちまちに語られてきた世界は、神話を抜きにして、みんなが納得理解できる可能性を秘めたものとして捉えられるようになりました。

では、ここまでのまとめの意味も込めて通説的な哲学の一応の定義をご紹介しましょう。

  • 哲学:あらゆる物事の本質を追求する学問。

言語も価値観も習慣もあらゆる違いを飛び超えてみんなが納得(理解)できる物事の本質(真理)があるのか、あるとすればそれは何かと探求する学問が哲学になります。

2.タレスとは

いかがでしょう。哲学、なかなか壮大な営みですよね(笑)

こんな壮大な取り組みいったい誰がし始めたのでしょうか。いよいよここではその始祖とされているタレスについて解説していきます。

2-1.哲学の祖 タレス

まずは、そのご尊顔を拝みましょう。

f:id:miyamot:20210109150704j:plain

この人がタレスです。さすが、哲学の祖というだけあって難しそうな顔をしていますね(笑)

彼が哲学の祖とされている人物になります。祖とされているというのは、アリストテレスの「形而上学」にそう記されているためです。確かに、哲学を1-2.のように定義してみると誰が最初に始めたかという問題は難しいですよね。だって、何かしらの本質的なことって誰でも一度は深く考えたことがあるはずですから、タレスより前に哲学的に考えた人がいたって不思議じゃないです。

それでも一応哲学の始祖とされているのは、アリストテレスの「形而上学」に記されていることとタレスの考えがまさに1-1.で定義した哲学であったからです。

彼は、1-2.で解説したミレトス出身の学者でした。ミレトスの性質上、多くの価値観や考え方、文化に触れた結果、みんなが神話によってバラバラにとらえているこの世界を何とか共通理解できる形で説明できないかと思うようになりました。

ここから出発した彼は神話によって語りえない世界は一体どうなっているのかという問いを立て、それに挑んでいきます。

これに答えるには、まず世界について知らなければなりません。「世界とは○○というものだから、△△になっている。」という方法で答えようとしたわけですね。

そして、後の哲学者たちを大いに悩ませる問いが完成します。

世界の根源は何か。(世界は何からできているか。)」

この問いに対するタレスの答えが、あの有名なテーゼです。

「万物の根源は水である。」

つまり、万物(この世界)はすべて水からできていて、世界の森羅万象は神話ではなく水で説明ができる

どういう経緯で「水」という答えに至ったのか。これは、はっきりとはわかっていません。(大きな原因は彼自身の著書や記録が残っていないためです。)

一つの可能性として言われているのは、彼の出身地ミレトスが港町として海(水)の恩恵を受けて発展していたことや学者として自然を観察していたときに、動物や植物を見ると生きているものには水分があるが、死んでしまうと水分が抜けて干からびてしまうと知ったことが原因ではないかといわれています。

3.タレスの功績

2.ではタレスの考えについてみてみましたが、どうですかね。これならみんなが納得できそうでしょうか。

正直、たくさんツッコミ入れたくなるのではないでしょうか(笑)そうですよね、これでこの世のすべてが説明できたらシンプルでいい世界だと思いますが、きっと今学者と呼ばれる人々はいませんね(笑)もちろん、あなたもご存知の通り、タレスの考えでは世界のすべてを説明することはできません。

では、彼の何が凄くて教科書にも出てくるのでしょうか。ここでは、タレスの功績について解説していきます。

3-1.何がすごいのか

ここまでの流れを少しまとめましょう。

  • 哲学以前神話による世界の理解解釈。(まちまちの世界観、異なる世界観との接触による世界観の揺らぎ)
  • タレス・哲学の誕生後世界の共通理解の可能性。(みんなが納得できる世界観の探求)

以上のことから結論を先に書きます。

タレスの最も評価されるべき点は、万人に共通の”概念”で世界を説明しようとした点です。

もう一度タレスのテーゼを見てみましょう。

「万物の根源は水である。」

「水」という概念、あるいは「水」というものはみんなが知っていると言えそうですよね。仮にこのテーゼが正しかったとしてこれはみんなが納得できますし、正しくなかったとしてもいやいや違うでしょってツッコミを入れることもできますね。これが画期的だったわけです。

これが神話や神で説明されてしまうとどうでしょう。

いやその神知らないしとか、うちが信じてる神が絶対に決まってるとかなりそうですよね。

つまり、タレス人類皆が共に吟味できる思考法を提示したわけです。(本人がこういう意図を持っていたかはわかりませんが。)

これってとんでもない大発明ですよね。例えると、全人類共通の教科書を作ったという感じでしょうか。その教科書を使っていれば、共通の問題(この世界そのものや現象など)について誰とでも話し合え、吟味できる。そして、そこには相手にわかってもらうための思考のエッセンスが詰まっているという具合です。(わかりにくかったらごめんなさい。)

高校生が学習する世界史や倫理の問題ではタレスのテーゼそのものが重要視されますが、彼の本当に重要な点はこういった世界基準の思考法を提示したということに他なりません。実際、この後のソクラテスプラトンアリストテレスといった超有名人たちもこの思考法で議論を盛んに行っていきますしね。

以上のような偉業から世界史でも倫理でも出てくる重要人物になるわけですね。

4.まとめ 人類皆哲学者

いかがでしたでしょうか。今回は哲学の祖タレスについて解説してみました。彼の凄さを少しでもご理解いただけたら幸いです。

1-2.では哲学を一応あのように定義しましたが、3-1.では世界基準の思考法と書きました。これらのことを考えると、この記事を読んでいただいたあなたなら、海外では哲学が教養となっていることやあらゆる場面で哲学の要素を見かけることが少し納得いていただけたかと思います。

誰でも一度は何かしらの本質を深く考えたことがあるはずです。

自分の幸せとか、人生、人間関係、生死、苦悩、不安、仕事、学業などなど。哲学なんて勉強していなくても、哲学史なんて知らなくても、あなたが何かしらの本質について向き合っているその瞬間、紛れもなくあなたは哲学してるんですよ。物好きが度を過ぎて専攻分野の傍ら哲学の研究をしていた私が言うのもなんですが...(笑)

だから、(これは個人的な意見ですが)哲学は学問の中で一番守備範囲が広く、入り口は本当に身近にあると思うんです。

そう考えるとなんだか難しそうな哲学にちょっと親近感が湧きませんか(笑)

コロナで家にいる時間が増えた方も多いかもしれませんが、たまにはゆっくり自分のペースで頭使ってみるのもいいかもしれませんね。

ということで今回はここまでです。

感想、質問、リクエストなんでもウェルカムなので、ぜひ気軽にくださいね。お待ちしてます。 ではまた次回お会いしましょう!